猪笹王
奈良県吉野山中に、一本足で跳ねる一つ目の猪笹王と呼ばれる怪物がいた。
猪笹王は伯母ヶ峰という峠で、暴れ回っていたところを、猟師に撃たれてしまった。
その後武士に化け、紀州の温泉宿に治療に行き、寝姿を見るなと宿の主人に告げる。だが、宿の主人は不審に思いついつい、覗き見してしまった。
すると、大きないびきをかいて、寝ている猪の化け物が眠っていた。油断した寝姿で、正体がばれてしまったのだ。
正体を見られた猪笹王は宿の主人に、自分を撃った人間の所有する、猟犬と鉄砲を排除するよう、交渉してほしいと、依頼した。
宿の主人は祟りを怖れて、交渉したのだが、聞き入れてくれない。
これに怒った猪笹王は前以上に暴れるようになってしまい、伯母ヶ峰を通る者はひとりもいなくなってしまった。
こうして、街道は廃れてしまい、地元の人々は困りはててしまう。
そこで、見かねた丹誠上人が、法力で猪笹王を封じ込めた。
毎年旧暦の12月20日は、封印が解けて猪笹王が自由になると云われている。
そして、その日は人間の入山を禁じている。